今まで村上春樹さんのこと、 なんとなく鼻持ちならなくて ベートーベンの交響曲は誰々の指揮でしか聞けない、とか 小説の登場人物たちに語らせるところ、 村上さん翻訳のグレートギャッツビーを読もうと思ったら 全く『春樹節』が強すぎて村上さんの小説になってしまっているところなど 反感を覚えていたのですが、 一冊の本を読んで全く評価を改めることになりました 『誕生日の子どもたち』 著/トルーマン・カポーティ 訳/村上春樹 繊細で、でも決して繊細さの押しつけじゃなく 子どもの心情が言葉になって届く スックや僕の顔、感謝祭の家の様子、台所の風景が 色鮮やかに目の前に現れる とくに『感謝祭の客』と『クリスマスの思い出』は、 子どもの頃には持っていたけれど 大人になると構っていられなくなってしまうような 大切にしておきたい心の揺れ動きが 一番美しい形で結晶化している短編です 雰囲気の異なる『無頭の鷹』も構成が面白い 冒頭に説明を省いて現在を写してから、 過去に時間軸を戻して読者に状況を把握させていく手法は 映画を見ているようです 村上さんの筆の力、言葉の力にも感動しました お家に他の方が訳した短編集もあったのですが、 数ページ読んで閉じました 美しいイメージが壊れてしまう 良い翻訳、良い言葉や文章には 手で触れているような温度や質感、 目で見ているような鮮やかさ、 1人友だちを亡くすような悲しさがあって 自分が経験したことのように記憶に残ります 翻訳でこんなに変わるものなんですね 『誕生日の子どもたち』 クリスマスにぜひ読んでもらいたい、素敵な一冊です 読んでよかった
by 96770
| 2014-12-22 12:27
| 書店
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