土砂降りの雨の中、羅生門の下
雨がやむのを待つ杣売りと旅法師が、 雨をしのぎにやって来た下人に 3日前の奇妙な事件について話し始める 『羅生門』 監督/黒澤明 おもしろいねえ。なるほどなあ 人間はすぐに自分の利になるように嘘をついちゃうし、 自分の見たいものしか見れない 故意か自然か、ついつい都合の良いよう事実を歪曲させてしまう そんな人間の性を、 コンパクトな物語をつかって鮮やかに見せてくれました 「12人の怒れる男」もそうですが、 シンプルな構成で「おおお!」と思わせてくれる映画が好きです シンプルな分、監督の力量が問われる上、 巧いと深く明確に記憶に残る 『羅生門』も、何度も思い出しては、反芻する映画になりそうです 昨日は『ライムライト』も見ていたのですが、 母は若い頃に森茉莉が書いたチャップリンの悪口を読んだために、 以後どうしても彼のことを穿った目で見てしまうそうです で、感受性が豊なときに何を読むかは 物の見方に非常に影響を与えるね、という話をしました 今、四方田さんの『見ることの塩』イスラエル編を読んでいます イスラエルパレスチナの状況、 それぞれの民族の中でのさらに細分化された差別意識などを読んでいると まったくどの立場から鑑みるかでものの見え方が全く違う 四方田さんの文章は、抑制して書いてくれているので読みやすい でも、親パレスチナ派なのでもちろんパレスチナ人よりの本になる 自分の立場でものを書くことが、もっともなことなので もちろんそれが悪いことではない 問題なのは今、私は四方田さんにゾッコンなので ついつい彼の著作物を丸ごと受け入れてしまうこと いいな!と思う人の本を読む時は気をつけないと イスラエル擁護派やシオニズムの本も読んでみなければと思います 還って、森茉莉さんの本について 確かよしもとばななさんも大好きな作家として 尊敬の念を込めて、超一級の悪口を書ける人、と評していたと思う しかし、まあまずはその人物を予備知識無しに知ってから聞きたい 先に悪口を聞いてしまうと、それが巧い分 頭に残ってしまってどうにも真っすぐに見れなくなってしまうんじゃないかな 悪口は老後の楽しみに取っておきたい 脱線しましたが、『羅生門』を見てもう一つ感じたこと いつの時代も女の人は大変だな、と思いました インドで、強姦された女性が「一族の恥」として家族に殺されたり、 モロッコで、レイプされた女性がレイプ犯と結婚するよう強制されて自殺したり、 『見ることの塩』に書いていた「イスラエルでの噂」曰く、 イスラエル軍がパレスチナ人の密告者を養成する場合、女性を輪姦する アラブの強い貞操観念を逆手に取って、 家族に言わないかわりに密告するよう脅迫する バレてしまっても女性は父や兄、村の人たちに殺されてしまう そんな世界の話を聞いて、 なんて野蛮で無知な国々と感じていましたが 数十年か数百年前の日本も同じような価値観を持っていたんだと 思い知らされました どこの国でも女の人は虐げられている 腕力で劣るから、そして忍耐強いからなのか 男性の方は疑問を抱かないのだろうか
by 96770
| 2014-11-05 11:34
| シネマテーク
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