『隠し砦の三悪人』


山名家との戦に破れた秋月家の侍大将と姫、秋月領地の百姓2人

御家再興のための金の延べ棒とともに

同盟国早川領への脱出をこころみる


『隠し砦の三悪人』 監督/黒澤明


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お金にがめつくならないように、気をつけよう


百姓2人、良い奴になるのかなー?っていう期待を

ことごとく裏切っていくのが凄い


なんだか憎めないけれど、ずーっと意地汚い


今どきの映画でこんなに期待を裏切りつづけるのってないんじゃないかな

脚本家、忍耐力あるなー!

普通なら改心させて、姫助けたりする見せ場を作って

華を持たせて大団円、みたいな盛り上げ方をしたくなるけれど

そういう安易さがない!



それから、やっぱり人間はおどおどしてはいけないねえ

今週、何作か黒澤監督の映画を観ているのですが、

女性がすぐ泣く

しかし『隠し砦』のお姫様はどんと構えていて好感が持てます

強気の態度で凛々しい女性でありたいですね
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# by 96770 | 2014-11-09 21:49 | シネマテーク

人間の性『羅生門』

土砂降りの雨の中、羅生門の下

雨がやむのを待つ杣売りと旅法師が、

雨をしのぎにやって来た下人に

3日前の奇妙な事件について話し始める


『羅生門』 監督/黒澤明


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おもしろいねえ。なるほどなあ


人間はすぐに自分の利になるように嘘をついちゃうし、

自分の見たいものしか見れない


故意か自然か、ついつい都合の良いよう事実を歪曲させてしまう


そんな人間の性を、

コンパクトな物語をつかって鮮やかに見せてくれました



「12人の怒れる男」もそうですが、

シンプルな構成で「おおお!」と思わせてくれる映画が好きです

シンプルな分、監督の力量が問われる上、

巧いと深く明確に記憶に残る

『羅生門』も、何度も思い出しては、反芻する映画になりそうです






昨日は『ライムライト』も見ていたのですが、

母は若い頃に森茉莉が書いたチャップリンの悪口を読んだために、

以後どうしても彼のことを穿った目で見てしまうそうです


で、感受性が豊なときに何を読むかは

物の見方に非常に影響を与えるね、という話をしました




今、四方田さんの『見ることの塩』イスラエル編を読んでいます

イスラエルパレスチナの状況、

それぞれの民族の中でのさらに細分化された差別意識などを読んでいると

まったくどの立場から鑑みるかでものの見え方が全く違う



四方田さんの文章は、抑制して書いてくれているので読みやすい

でも、親パレスチナ派なのでもちろんパレスチナ人よりの本になる

自分の立場でものを書くことが、もっともなことなので

もちろんそれが悪いことではない


問題なのは今、私は四方田さんにゾッコンなので

ついつい彼の著作物を丸ごと受け入れてしまうこと


いいな!と思う人の本を読む時は気をつけないと


イスラエル擁護派やシオニズムの本も読んでみなければと思います



還って、森茉莉さんの本について

確かよしもとばななさんも大好きな作家として

尊敬の念を込めて、超一級の悪口を書ける人、と評していたと思う

しかし、まあまずはその人物を予備知識無しに知ってから聞きたい

先に悪口を聞いてしまうと、それが巧い分

頭に残ってしまってどうにも真っすぐに見れなくなってしまうんじゃないかな

悪口は老後の楽しみに取っておきたい





脱線しましたが、『羅生門』を見てもう一つ感じたこと

いつの時代も女の人は大変だな、と思いました


インドで、強姦された女性が「一族の恥」として家族に殺されたり、

モロッコで、レイプされた女性がレイプ犯と結婚するよう強制されて自殺したり、

『見ることの塩』に書いていた「イスラエルでの噂」曰く、

イスラエル軍がパレスチナ人の密告者を養成する場合、女性を輪姦する

アラブの強い貞操観念を逆手に取って、

家族に言わないかわりに密告するよう脅迫する

バレてしまっても女性は父や兄、村の人たちに殺されてしまう


そんな世界の話を聞いて、

なんて野蛮で無知な国々と感じていましたが

数十年か数百年前の日本も同じような価値観を持っていたんだと

思い知らされました



どこの国でも女の人は虐げられている

腕力で劣るから、そして忍耐強いからなのか

男性の方は疑問を抱かないのだろうか
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# by 96770 | 2014-11-05 11:34 | シネマテーク

めちゃくちゃ面白いや!『七人の侍』

勢い、2日で2回観てしまいました

計7時間、全く飽きないねえ


昔の名作映画と言われると、

退屈で小難しい映画だったらどうしよう、と思っていましたが

本当に面白かった、観て良かった


これが天才か!




戦国時代、百姓たちは村を襲う野武士たちに苦しめられていた

ある日、麦の収穫が済む頃を見計らって村を襲おうと計画している野武士の

話を立ち聞いた村民たちは、村を守るため

百姓のために戦ってくれる侍を探しに、町へと向かう


『七人の侍』 監督/黒澤明


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息つく間もなく、207分間圧倒され続けた

これが1954年の映画

古くささや、ぎこちなさが微塵も無く

むしろ斬新


先の読めない展開、スピード感、迫力迫力迫力


「楽しませよう」という精神がいいですね



そして、こんなにもエンターテイメントとして

興奮させるのに、最後に虚しさを残す

ここが凄い


勧善懲悪や善悪を押し付ける物語ではないところに、

人間社会のリアルさがある



あらすじを辿ると、明解なストーリーなのに、

最後、「あーよかった!」と能天気な終わり方にさせない


最後の3分間に圧倒された


活劇なのに内省させる余白の残し方



今、退屈だなーって思っている人、観た方がいい

こんなに退屈な生活ができているのは

誰か志のある人がどこかで犠牲になってくれたからなのかも知れない

いつか血を流してくれた人がいるのかも知れない


争いは全て虚しい




2回観ると、1回目では聞き取れなかったセリフも

理解出来るようになったり

難しい百姓の言葉も分かるようになってより楽しめます


特に七人の侍たちの性格と顔の違いが

より明確に分かったので2回観てよかった

登場人物がそれぞれに魅力的なのが良いんでしょうね

本当に七人七様にカッコいい


1回目は三船敏郎の存在感に圧倒される

セリフの8割は奇声

ふとした時の顔の男前っぷり

粗野なのに真理をついている


でも2回観ると超人的日本男児の鑑・久蔵の

渋さにノックアウト

こりゃあ勝四郎くんじゃなくともクラッときちゃうよね


いや、でも自分がなるなら、先生こと勘兵衛さんだな

強く賢い人格者、弟子入りしたくなる


飄々とした平八さんも良い味がある

こういう人が仲間には必要


1回目は丸顔がかぶっていて七郎次と五郎兵衛を混同しがちだったけど、

2回目よく観てみると、五郎兵衛はなかなか人柄が良い

(丸くてつるっとしているのが七郎次、

丸くてヒゲが生えててよく笑うのが五郎兵衛)


しっかりそれぞれの性格の違いが描かれていて、

見せ場もある

画面の向こうへ老若男女問わず恋させる魅力に溢れています


あと、実は百姓も演技派

全く百姓という印象ばかりを残す


個人というよりは、総体として日本人を見たときに感じる

いやったらしさは、虐げられた百姓の根性だったんだなあ


長いものには巻かれ、いつでもヘイコラしてる

でも自分より弱い相手には集団で群がる下品さ

日本人の人口のほとんどがかつての百姓なのだから

日本人って百姓なんだなあ、と感じた

歴史が人間を作っていることを突きつけられて衝撃を受けました





やっぱり2回観て2回とも泣けるのは、

町へ出て侍を集める中でのワンシーン

「こいつらは侍に白飯食わすために、

自分たちはヒエしか食ってねえんだ!」


食べ物の話に一番痛切に感じ入りました






☆内田樹さんの『七人の侍の組織論』が非常に参考になります

内田さんの話はいつも明解なところが好き


『七人の侍』の組織論


勝四郎くん、重要なポジションだったのね
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# by 96770 | 2014-11-04 00:45 | シネマテーク

映画のような本当の話


数日前の日経新聞から切り抜いた、気になる記事を紹介しましょう


ー引用ー

『潜入操作で妊娠させ賠償 英警察』 【ロンドンAFP=時事】

英警察がかつて「過激派」と見なした団体に送り込んだ潜入捜査官が、

活動家の女性に子供を産ませていたとして、

42万5000ポンド(約7400万円)を賠償すると警察が女性に

約束していることが分かった。

英BBC放送や英新ガーディアンによると、

女性は1980年代、動物愛護団体の活動家だった。

同じ活動家の男性と深い関係になり男児を出産。

しかし、2年後に男性は失踪してしまった。




いや〜現実は小説よりも奇なり

一本脚本が書けそうな記事ですね




「過激派」動物愛護団体ってどんなことをしているのか、

潜入してみたい気もする
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# by 96770 | 2014-11-01 12:04 | 日記

もう一度観たい!『フランシス・ハ』


お気に入りの一本になりました!


『フランシス・ハ』


ニューヨークで親友ソフィーとルームシェアをし、

見習いダンサーをしている27才のフランシス


ところがある日、彼氏とも別れ、

ソフィーからも共同生活解消を切り出されてしまう


ダンサーとしても芽が出ないフランシス

未来を探してニューヨークを駆け抜ける


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面白かった!

女友だちとの微妙な距離やセリフ回し、

ATMでお金をおろそうと思ったら手数料3ドルでため息、

すごくリアルで、いつの間にか自然と物語に入り込んでしまいました



20代は必見!




観賞後、インターネットで映画の感想を見ていると

「イタい女の子が〜」「空気の読めない〜」

っていうコメント多数!

圧倒的にイタい・空気読めないという形容詞の下、

評価されているフランシス


あれ?フランシスってイタいんだ!空気読めてないんだ!

と、びっくりしたから

恐らく私も24才のイタい子

道理で他人事とは思えなかった訳



でも、自分のことは多数派に置いて、

大人になりきれていない人を「イタい人」の一言で

カテゴライズしてしまう短絡的な人にはなりたくないし、


フランシスの友人ソフィーのように、

自分は仕事を辞めて(夢を諦めて)結婚するけど

「あなたは変わらないでね、ずっとそのままでいてね」

って言っちゃう大人にもなりたくないな


ラスト、「甘い」「現実味にかけてる」って書いている人も

多かったのだけど、一体どんだけ厳しい社会に生活しているのか、

ちょっと心配になってしまう

「好きなことをやっていて、その近くに才能あった」

っていうのは悪くない



映画の感想って世相を反映していますね



フランシスが全然モテようとしていないところ、

ダンサーにしてはガタイの良過ぎるところ、

美人じゃないけどかわいげのあるところがとっても良かったです



彼女の素直で媚びてない部分が、映画を陰湿にせず

爽やかで楽しいお話でした



設定は「ゴーストワールド」にも似ているけれど、

ゴーストワールドの女の子達にはイマドキな陰険さがあって、

斜めに構えた映画

それはそれで楽しめるけれど、

「フランシス・ハ」のあっけらか〜んとした素直さの方が好感度が高い



人生楽しむなら、素直さが大切やねえ
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# by 96770 | 2014-11-01 11:52 | シネマテーク