人気ブログランキング | 話題のタグを見る

カポーティのイノセントな記憶に触れる『誕生日の子どもたち』


今まで村上春樹さんのこと、

なんとなく鼻持ちならなくて


ベートーベンの交響曲は誰々の指揮でしか聞けない、とか

小説の登場人物たちに語らせるところ、


村上さん翻訳のグレートギャッツビーを読もうと思ったら

全く『春樹節』が強すぎて村上さんの小説になってしまっているところなど


反感を覚えていたのですが、

一冊の本を読んで全く評価を改めることになりました




『誕生日の子どもたち』 著/トルーマン・カポーティ 訳/村上春樹


カポーティのイノセントな記憶に触れる『誕生日の子どもたち』_d0249678_125982.jpg



繊細で、でも決して繊細さの押しつけじゃなく

子どもの心情が言葉になって届く

スックや僕の顔、感謝祭の家の様子、台所の風景が

色鮮やかに目の前に現れる


とくに『感謝祭の客』と『クリスマスの思い出』は、


子どもの頃には持っていたけれど

大人になると構っていられなくなってしまうような

大切にしておきたい心の揺れ動きが

一番美しい形で結晶化している短編です



雰囲気の異なる『無頭の鷹』も構成が面白い

冒頭に説明を省いて現在を写してから、

過去に時間軸を戻して読者に状況を把握させていく手法は

映画を見ているようです



村上さんの筆の力、言葉の力にも感動しました

お家に他の方が訳した短編集もあったのですが、

数ページ読んで閉じました

美しいイメージが壊れてしまう


良い翻訳、良い言葉や文章には

手で触れているような温度や質感、

目で見ているような鮮やかさ、

1人友だちを亡くすような悲しさがあって

自分が経験したことのように記憶に残ります

翻訳でこんなに変わるものなんですね




『誕生日の子どもたち』

クリスマスにぜひ読んでもらいたい、素敵な一冊です

読んでよかった
by 96770 | 2014-12-22 12:27 | 書店
<< 村上春樹のスピーチ 歩いて食べる台湾 プロローグ >>