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世の中怖い『悪い奴ほどよく眠る』

社会の悪を痛烈に描いた傑作復讐劇


『悪い奴ほどよく眠る』 監督/黒澤明


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全く、すごい映画だねえ



目に見えている悪(復讐の対象:岩渕)だけでなく、

さらにその上に君臨する見えない巨大な悪(岩渕が電話で話す相手)、

そして悪に対し思考停止し、

盲目的に従っている小役人(特に和田さん、そして一般市民の象徴)まで、

3種の悪を描いている


卑近な悪から巨悪まで

虫の目になり鳥の目になり書かれた脚本がすごい


和田さんはまさにハンナ・アーレントの言う"凡庸な悪"を体現している


全く根は善良な人なのに、組織に組み込まれると

善良ゆえに追従してしまう怖さ



西の友人、板倉のセリフ

「あれは人間じゃないぜ!役人だ

官僚機構の鋳型にはめ込まれた特殊な生きもんだ!」

胸に響きます




そして悪を倒そうとする西さんに決定的なダメージを与えるのが、

根が善良な和田さんと佳子さん(岩渕の娘であり、西の妻)という皮肉

社会を変えようとする人の足を引っ張るのが、

良心的だけど現実の残忍さを直視出来ない飼いならされた優しい人々というところに

悪vs善で終わらない現実味がある


真っ当な良心は悪が支配する仕組みの中では無力

人間らしい情にほだされると負ける



「何もかも恐ろしく簡単で醜悪だ!」




でも、それだけだとあんまりにも世の中辛過ぎる
by 96770 | 2014-11-10 13:34 | シネマテーク
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