人気ブログランキング | 話題のタグを見る

語りかけてくる歴史本『若い読者のための世界史』


世界が誇る美術史家、エルンスト・H・ゴンブリッチ

職にあぶれた若き日の氏が、

弱冠25歳にして書き上げた一冊

語りかけるような文体に、思わず惹き込まれる


『若い読者のための世界史』 著/エルンスト・H・ゴンブリッチ



語りかけてくる歴史本『若い読者のための世界史』_d0249678_0255241.jpg




いや〜本当に面白かったなあ!

知的好奇心に心地良く答えてくれる本でした



働くようになると、いろんな人とお話しする機会があります

その度、歴史を知らないがゆえ

綱渡りのように、会話をくぐり抜けてきました


歴史を知らないと昔のことも、

現在起きていることも理解することができない


もう少し世界の歴史を知らないと


一時期流行った

高校の教科書を読みなおそう!っていうのは

肌に合わない

なるべく易しく分かりやすく

しかもざーっと全体像をさらってくれるような本を探していました


まさに救世主


歴史初心者にはもってこいの一冊です

ヨーロッパを中心とした世界の流れを網羅的に

ざっと読める




1番素晴らしいのは第一章

歴史に詳しい人も、ここだけは読んでほしい

ゴンブリッチさんの歴史に対する

心意気がロマンチックで粋

今までの歴史本のイメージを一新してくれます


お洒落な章タイトル

物語のような生き生きとした文体

なるべくどの民族についても良い面悪い面等しく書こうとする姿勢

出来事の関連性に配慮した流れ

歴史上の人物の描写には手応えを感じます




歴史嫌いの人はまずこの一冊を!

面白くて眠れなくなります




言葉の語源や読み手への呼びかけ、

まるで詩のようなゴンブリッチ自身の歴史と人類へのメッセージが

織り込まれ

緩急つけて進みます





映像を喚起させ、歴史上の人物への共感を呼ぶ文章が秀逸

こういう書き方があるというのも勉強になりました




歴史を知りたい!と思っても、

初学者の思いつきを打ち砕くに十分な退屈な本が多い

それに歴史と一口に言っても、

あまりにも広大で膨大

重箱の隅をつつけば無限大



この本なら、ヨーロッパに的を絞りつつ

イスラム教やキリスト教、孔子やブッダの教えを

大胆に数行に噛み砕いてエッセンスだけをまとめてくれたり、

啓蒙主義の起こり、マルクスの考えなんかも

ざっくり要約し、人類の発生から第二次世界大戦まで

ざーっと一本、筋道をつけてくれます



歴史は語る人によって解釈の変わるものだと思うが、

まず何か基準が無いと比べられない

その一本目の基準線を引くのにピッタリ

この本がまず私の歴史観の第一本目の基準線になりました

歴史にロマンと興味を抱けたことが何よりも収穫です

この本から出発して、

私の頭の中に生えた歴史の細い細い一本の木に

枝葉をつけ、果実を実らせて行きたい



誰にでも偏りはあるので、全く公平な歴史の本は書けないと思う

ゴンブリッチさんがどれほど偏った人なのか

まだ分からない

でも、人類への希望、人柄の良さが滲み出たこの本なら

許せるな




特に興味を持ったのは

産業革命と社会主義の興り

もはや他人事ではない

こうして「労働」が生まれたんだなあ

まさに今日の私たちの社会の仕組み、仕事観に繋がっている

悪名高き「ゆとり世代」として

「労働」の意識を良い方向へ変化させる一助になりたいです



今、同時代で起きていること、ITや科学の面だけでなく、

社会起業家とかナチュラルヘルシーブームとか

ヨガブームとか手仕事ブームとか

これらも何か大きな社会的意識の

劇的な変化への前奏かもしれない



30年100年500年先に振り返ると、

今日この1日も、世界史に刻まれる大きな革命のまっただ中

そんな意識が芽生えました


世界を知り、現在を知る為の

有益な取っ掛かりになる一冊です

歴史に苦手意識があったからこそ、

同じような人にぜひともオススメ
by 96770 | 2014-06-18 00:30 | 書店
<< ヤジ問題 言語学習は愉しみ『わたしの外国... >>