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『ヴェネツィアの宿』のちょっと良い話



幼い頃の思い出、留学の頃、家族の話

どこか悲しくも澄み切った、美しい言葉で綴られる12章


『ヴェネツィアの宿』 著/須賀敦子


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フランスに留学し、

教会の寮で出会ったドイツからやってきたルームメイト、カティア

須賀さんより年上の彼女は、母国で教師の仕事を辞してやってきた

初対面ですらすらと自分のことを語る彼女



『ゆっくり本を読んだり、人生について真剣に考える時間がほしかったので、

仕事をやめてフランスに来た、と彼女はひと息に話した。

しばらくパリに滞在して、宗教とか、哲学とか、

自分がそんなことにどうかかわるべきかを知りたい。

いまここでゆっくり考えておかないと、

うっかり人生がすぎてしまうようでこわくなったのよ。

そういうことをするためには、自分の国をはなれたほうがいいと思って、

パリに来ることにしたの。』



今まで聞いたどの留学理由よりも素敵で、

思わずノートに書き留めました



留学すると言うと、たびたび理由や目的を聞かれるけれど、

いつもぴったり来ることを言えませんでした



こんな風に留学理由を語るカティアさんの感性も

そんな彼女の言葉をそのまますっと拾う須賀さん感性も羨ましい




自分の外に、自分のことばを見つけるとき

思いがけず友人ができたような嬉しさと懐かしさが湧きます
by 96770 | 2014-06-10 21:22 | 書店
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