「ナイフの使い手だった私の祖父は十八歳になるまえにドイツ人をふたり殺している」 作家のデイヴィッドは、祖父レフの戦時中の体験を取材していた。 ナチス包囲下のレニングラードに暮らしていた十七歳のレフは、 軍の大佐の娘の結婚式のために卵の調達を命令される。 饒舌な青年兵コーリャを相棒に探索を始めることになるが、 飢餓のさなか、一体どこに卵が… 『卵をめぐる祖父の戦争』 デイヴィッド・ベニオフ デイヴィッドが祖父を取材し、祖父の回想として物語は語られる 「ドイツ兵をふたり殺した」というセリフ 初めにこのセリフを持って来ているのが肝 気になってついついページをめくってしまいました 全編に渡り伏線を張るのが巧い 残酷な戦争下での物語ですが、 文章は重々しくなくむしろ軽快 話の半分はコーリャの猥談 それが良かった 作者はひけらかさないタイプだけど、 実はとんでもなく人間の心の機微に敏感な人だと思いました まさに今、死ぬかもしれない状況のレフ少年が そんな時にも頭の中は自分のことで一杯 そしてそのことに自分で気づいているレフ少年の語る言葉 その感覚がすごく鋭かった 読んでいるとレフの心境には共感する部分が多々あったのだが、 そのほとんどがこの本を読むまでは、 自分がそんなことを感じていたとは今まで気づかなかったような微妙な心理で、 そこに作者の筆力を特に感じました レフの心境や心の変化をレフ以上に感じ、レフ自身のように書く しかしその書き方はあくまで軽妙で猥談 正面切って戦争に反対するのではなく、 スッと裏側から戦争と人間の馬鹿馬鹿しさにメスを入れる 今までの戦争本や戦争映画とはまた違った余韻が残りました
by 96770
| 2014-03-04 01:58
| 書店
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